1968年のバイク世界一周旅行

その67


夕立がやみ、虹のかかったライン川を渡ると
スイスのバーゼルだった。
バーゼルはフランス、ドイツと国境を接する
スイスの第三の都市である。


スイスは九州より少し大きめな国である。
バーゼルはもとより、スイスに入った途端、
今まで通過した国々では、見たこともない絵葉書をから
抜け出したような、
きれいな風景が広がった。


旅の途中で、なんども素晴らしいと
思い撮った写真が無駄であったと
思えるほど、美しい風景がスイスにはあった。


夏でも雪を抱くアルプス、
その頂を目指す登山電車、
美しい山々がそびえる狭い谷底を、
曲がりくねりながら走る道路とそこに広がる牧草地、
湖と遊覧船、


周りを山々に囲まれた人たちは、
あたかも外の国を知らないように、
ただ、コツコツと勤勉に、働いているように思えた。


反面、スイスは永世中立国である。
男女を問わず、国民皆兵制度の国で、
タクシーの運ちゃん、駅員、労働者、
学校の先生まで、定期的に軍事訓練を受ける義務があり、
武器は各人の家で保管されている。
スイスの山間を走っているとよく数人のグループで射撃の訓練をしているのを見た


私はそのような平和な国、スイスをバーゼルから
チューリッヒ、グリンデルワルド、
ツェルマット、ジュネーブと
小さな国のツーリングを思い切り楽しんだ。