1968年のバイク世界一周旅行

その37


ニューメキシコ州の東隣は
オクラホマ州とテキサス州の二つの州に接しているが、
ルート66はテキサス州を通っている。


ニューメキシコ州の州境で時計を見ると、
午後五時を少し回っていた。
日没までには、まだ時間がありそうなので、
急ぐ旅でもないが、少しでも距離を稼ごうと走りだした。


テキサス州に入り、レストランでコーヒーを飲みながら、
何気なく柱時計に目をやると、七時であった。
走っているとわからなかったが、
ニューメキシコ州とテキサス州の間には
一時間の時差があったのだ。


アメリカの大平原を一日中走り続け、
疲れた私には、夕方、一時間前に進む時差は
精神的にも肉体的にも、耐えがたい疲れを感じさせた。


西日を体全体に浴びながら、
西に向かって走るのとは反対に、
星が輝き始めた夕闇に向かって、
走るのは体力も気力も萎えてしまう。


この時初めて、人間太陽の恵みによって、生命の活力を維持していることを実感し、
西へ向かう方が時間も得するし、
精神的にも楽であることを知った。