1968年のバイク世界一周旅行

その43


セントルイスから北へ二時間、
イリノイ州の首都スプリングフィールドに着いた。
この町はケンタッキー州の丸太小屋で生まれたリンカーンが、
弁護士になり、大統領になるまでの二十五年間住んでいた町で、
「リンカーンの住んでいた家」、「リンカーンの事務所」、「リンカーンの墓」など「ランド・オブ・リンカーン」一色、観光の町であった。


私の記憶にあるこの町は、リンカーンが大統領になり
スプリングフィールド駅から、
ワシントンのホワイトハウスへ出発するとき、
見送りに来た多くの市民に向かって
列車の最後尾のテラスから演説した、
雑誌か教科書で見た挿絵であった。


私は想像もしなかったその歴史的な現場いる現実に、
身震いするほどの感動と興奮を味わった。


シカゴまではあと約三百二十キロ、
トウモロコシや麦畑の広がるハイウェイを一気に飛ばした。
走行距離は約三千三百キロを示していた。


途中悪天候のため、ロスアンジェルスからシカゴまで
九日間ぐらい費やした。


たまたま通ったところが悪かったのか、
大都会シカゴごちゃごちゃした町で興味もなく、
よく映画に出てくる高架鉄道のガード下を通り抜け
シカゴ・ターン・パイクー、ルート90を東へシカゴを通り抜けた。
アメリカのハイウェイは、どこも無料化と思っていたが、
ここは有料であった。


アメリカには四つ時間帯(タイムゾーン)がある。
ぺンシルバニア州に入ると東部時間になった。
「シルバニア」はラテン語で森という意味だそうだ。


景色は自然豊かな緑一色の大草原となり、
点在する落ち着いた色彩の大きな民家は
白ペンキの柵に囲まれ、美しい風景が広がっていた。


地図を見ると、五大湖の一つ、
エリー湖に沿って走っているようだが、
実際は大分離れているらしく見えなかった。