1968年のバイク世界一周旅行

その69


翌朝、このYHで朝食を摂っていると、
「オジさんじゃない?」と、
二十歳前後の日本人女性が声をかけてきた。


28才の私に
「オジさん」とはと、一瞬、驚き、あっけにとられたが
彼女は初対面ながら、にこやかに嫌味のない女性で
その自然な振る舞いに私は好感を持った。


彼女は、私がバーゼルのガソリン・スタンドで
給油しているとき、
ヒッチハイクで乗せてもらっていた車から
私が日本人だと気付き、
私に大声で声をかけたそうだ。


ヘルメットをかぶっている私には、
彼女の声は聞こえなかったが、
彼女の話を聴いていると、
誰かが車から手を振っていたのを
見たような気がした。


彼女も大学が封鎖されているこの機会に
ヨーロッパ旅行するためアエロフロート航空で
来たと言った。


彼女は、女性の一人でヒッチハイクするのは
危険だから、同じ年頃の日本人男性をボディガードに
旅を続けていると言った。


二、三日滞在した後、
彼女はボディガード君と、そのYHを去って行った。
私も、彼らに続いて
オーストリアのウィーンへ出かけることにした。