1968年のバイク世界一周旅行

その23


ロスアンジェルス一帯の地下層には油脈あり、
現在はどうか知らないが、
その油脈の上に建物があれば、
石油会社は、建物の持主に、その土地の広さに応じて
年間、いくらかの配当金を支払っていた。


墓を掘ると、いつも、ジワジワと石油がにじみ出ていた。
だから、埋葬日は白人スタッフの作業着は
油粕で汚れていた。
何十年も前に埋葬された古い棺桶には
油まみれの「仏さん」が、そのまま横たわっており、
私が働いていた墓では、別注のコンクリートの棺桶に
木製の棺桶を入れ、コールタールで油が
しみこまないように、封をして埋葬していた。


日本の墓は幽霊が出ると
子供のころ聞かされていたので
墓は薄気味悪いものと思っていたが、
アメリカの墓は公園のようで
明るく、気味悪さは感じなかった。


私は、いわゆる、無宗教者であるが、
仏教国、日本生まれなので、
多少は、自然と仏教的な観念が
体にしみ込んでいるらしく、
墓などで用はたさないが、
事務所のトイレまで行くのが、面倒なのか
ナカソネとタマシロは平気で墓石に
小便をかけていた。


毎日、葬儀や墓石に刻まれた故人の、
誕生から死までの歳月を見ていると
人間の一生は、宇宙の星が瞬きする一瞬だと
思うようになる。
やはり人間、
「生きているうちが華」
「死んで花実が咲くものか」
である。
自分の人生、大切に、一生懸命生きるべきだと感じた。


こんな分かり切ったことを
知っただけでも
米国留学し、墓地で働いた価値があったかも・・・。