1968年のバイク世界一周旅行

その30


ロサンジェルスの大盆地を抜け、
サンバーナーディーノから、ルート15の山岳地帯を
登りきると、雲一つない砂漠の中を一直線にハイウェイは
伸びていた。
五月のさわやかな太陽と風を浴びながら、
私のバイク「YMⅠ」風とエンジン音だけが支配する
砂漠の中を快適に走り抜ける。
それはライダーだけが感じる、自由と開放感に満ちた心地よい
ツーリングである。


ロサンジェルスを出発して、最初の休憩地点、バーストウ。
ガソリン・スタンドとレストランが数軒点在する
ラスベガスまでの中間地点で、
西部劇映画に出てくるような
小さな町である。


ここでルート15と並行していたルート66は
枝分かれして南東へ延び、
アリゾナ州のキングマンへと続く。
途中、今は映画で有名になった
「バッグダッド・カフェ」もあるが、
当時は映画も制作されていなかった。


私はバーストウのレストランで、
コーヒーを飲みながらノートとボールペンを取り出し、
そこまでの走行距離、
ガソリン代、時間など
日本に帰ってからガイドブックを出版し
一儲けしようと記録を取る。


私はルート66と分かれたルート15を北東へ走り
昔の鉱山跡を観光地カリコ、
デス・バレー経由、ラスベガスのホテルに到着したのは
夜になってからだった。


初日のツーリングで疲れていたが、
興奮していたのか眠れず
部屋からカジノへ降りてゆき
ブラック・ジャックをすると、
200ドルほど勝ってしまった。
私は出発前、


モーテル代、ガソリン代、食事代など
一日15ドル、ニューヨークまで
二週間として合計210ドルぐらいはかかると
計算していたが、
この夜、数時間で幸運にも
アメリカ大陸横断の費用は稼いだ。


こんなに簡単に稼げるなら
もう一泊しようかと思ったが・・・。