1968年のバイク世界一周旅行

その54


ナポリからヨーロッパ・ツーリングへ


空港からタクシーを飛ばし、ナポリ港へ行った。
ちょうど私のバイクを乗せた客船が接岸中で、
ナポリ支社には、すでに連絡が入っており、
入管手続きは簡単に済んだ。


当初の大雑把な計画では、イタリア南部から船でエジプトへ渡り
アフリカ大陸の北部を西へ向かうつもりだったが、
船で行くと、また、バイクが行方不明になるかもしれないと、
不安になり、
その夜は、計画を練り直すため、ナポリに泊まった。


日本語のガイドブックも持っておらず、
観光情報の入手は、まず、ホテルであった。


どこに行っても地元の人は、自分の町を自慢したが、
ナポリのホテルのスタッフもそうであった。
ナポリ港は世界三大港とか世界三大夜景とか、
建物と建物の間にロープを張り、それに洗濯物を干している、あのみっともない風景まで自慢の種にして、
「『ナポリを見てから死ね』と言うでしょ」と得意満面であった。


今なら、簡単に入手できるそのような観光情報も、
当時はわからなかった。


なるほど、これからは海外旅行する日本人観光客も多くなる、
そのためにも、海外観光ガイドブックは必要であるから
作くろうと考えた。
勿論、絶対売れ、儲けるに違いない、バイク旅行費も浮くと
皮算用も忘れなかった。


紀元七十九年火山の大爆発で埋もれた、あの有名なポンペイの遺跡も、ナポリの南、ほんの、約三十キロにあったのだ。
旅することは未知を知ること、歴史や地球を知ることで
あるかもしれない。
ナポリを訪れただけでも、この旅の価値があった。