1968年のバイク世界一周旅行

その87


物の本などを読むと、シルクロードは崇高なものと
表現されているが、
私にとっては、ロサンゼルスからインドまでの、
過酷な道に過ぎなかった。


来る日も、来る日も、砂漠の砂塵を浴びながらの過酷な道で、
書斎でおいしいコーヒーを飲みながら、シルクロードの本を読み、
シルクロードを想像する人とは違い、
私にとっては、どこが、どう素晴らしいのか疑問であった。


しかし、私がたどった砂漠の道の半分は紛れもなく、
東西交易に使った、ローマから中国までの、本物シルクロードであったことは事実であった。


時々、砂漠には朽ち果てたトラックや車の残骸が放置され、
バスは砂塵をまき散らしながら猛スピードで、
私の横を走り抜け、すれ違うたびに私は体中砂塵を浴びた。


手を振りながら、バスの窓から砂塵で汚れた顔を、
私に向ける日本人若者に何度も出会った。


彼らはヨーロッパからインドへ向け、
途中で食事やトイレなどで停まるであろうが、
トルコの山岳地帯やイランの砂漠を、
何日も走り詰めているのか、疲れ切った表情をしていた。


私は長距離をバスで移動する彼らの忍耐力というか、
我慢強さに驚くだけで、私には決してできない旅の形であった。
その点、バイクの旅は自分の意志で走ったり、
休んだりと、由に行動できる便利な交通機関であった