1968年のバイク世界一周旅行

その88


体を洗ったのは、テヘランの街角の水道で洗ったのが最後、
水のない砂漠では、一週間も体を洗わない日があった。


慣れとは、恐ろしいもので歯も磨かず、体も洗わない、
茶店ではハエがティ・コップの周りに群がり、
ティとともに飲み込んで、それを吐き出すことが、
当たり前のようになったが、
いつの間にか、気持ちが悪いという感覚がなくなっていた。


茶店で飲む不衛生な飲み水のせいか、
いつも下痢をしていたが、幸運にも病気はしなかった。


今もってわからないのだが、砂漠に不思議な箇所があった。
砂漠の砂が湿っていたので、素手で柔らかな砂漠の砂を掘り起こすと、少しずつ濁った水が湧きだしてきた。


洗面器ほどの大きさに掘り、濁りが沈下するのを待ち、
誰もいない砂漠の中、
丸裸になり、その水で汚れきった体や下着を洗った。


洗った下着は砂の上に広げ、砂をひっかけるとすぐ乾き、
そのあと手もみすると、ポロポロと汚れが落ち、
殺菌効果もあり衛生的だった。


中近東の人はトイレット・ペーパーを使わないので、
トイレには紙がなかった。
そもそも、トイレそのものが汚く、不衛生だったので
ほとんど、囲いのない砂漠の自然トイレを使った。
後始末にはボロボロになった下着をや、
縄などを使って済ませた。


日本大使館のあるところでは、職員に見つからないように
トイレで体を洗い、洗濯した。


大使館といえば、
若い日本の旅人たちは、旅先で日本へ手紙を書き、
返信は移動先の日本大使館で受け取るようで、
どこの国でも日本大使館へ行くと
多くの日本の若者が出入りしていた。


テヘランを出てから5,6日目、
アフガニスタンとの国境に近い町、
メッシャドに着いた。