1968年のバイク世界一周旅行

その42


カンザス・シティからセントルイスへ、
やっと雨も上がり、ときおり青空が見えはじめた。
オクラホマ・シティからセントルイスまで約五百キロ、
雨のため三、四日を費やした。


バッグの中の衣類は、大分雨を吸い込んでいたので
公園のベンチに広げで乾かしたが、なかなか乾かず
その上、汚れ、臭かったのでゴミ箱に全部捨て、
新品の衣類を買った。


セントルイスはミシシッピ河と、ミズーリ河の合流地点にあり
ミズーリ州の首都である。


この町で有名なのはミシシッピ河に面して
そびえる高さ百九十二メートルの巨大なゲートウェイ・アーチと
ビールで有名なバドワイザーの本社である。


一九六五年に建てられた、このアーチはこの町の観光名所になっていた。アーチは頂上に向け流線型になっており、
頂上は展望台になっていた。


ケーブルカーのような乗物で展望台へ上がってみた。
アーチは上がるに従い、倒れるのではないか
不安になるほど細くなっていた。


展望台の小窓からは遮るもののない、
大平原と長く南北に伸びるミシシッピ河が遠望できた。


この川岸では市街地観光用の三、四人ほど乗れる
小さなヘリコップターが客待ちしていた。
客待ちのパイロットが誘うので、いい経験になると思い乗ることにした。
客は私一人だった。
上空で「客はいないのか」と聞くと、
「数日前、競争相手のヘリコップターが墜落したからだろうと」と言った。
これを聴いた途端、ヘリコップター観光を楽しむ気は一気に失せた。