1968年のバイク世界一周旅行

その32


当時、ルート66は大規模な拡張工事が行われていた。


1985年、古いルート66は、
インターステート40となったが、
その後、ルート66は歴史的な道路として、
再び世界の愛好者に脚光を浴びている。


グランドキャニオンへの入口
ルート66沿いのウイリアムスに
着いたのは夜だった。


翌朝は気合を入れ、早朝ウイリアムスを出発、
ルート66離れ、ルート64を北へ
グランドキャニオンを目指した。
穏やかな、上り下りする針葉樹の森林地帯を
約一時間走ると、突然視界が開け
映画や写真で見た、
あの雄大なグランドキャニオンの風景が
目の前に迫ってきた


コロラド河の浸食作用により
千メートル以上の深い大渓谷を造り上げた
想像を絶する年月と自然の力のすごさ、
そして、自分という人間のちささというか、
人間の悩みなど、ひとたまりもなく、
一瞬に吹き飛んでしまうほどの
雄大な風景である。


グランドキャニオンは、
東の川上から、西の川下まで約450キロ、
東京・京都間と同じ距離である。
グランドキャニオンの上流は
どうなっているのかと興味が湧き、
渓谷に沿って東へ走っていくと
次第に渓谷の幅も狭くなり、
浅くなっていた。


左側の渓谷の景色に気を取られ、
覗き込むようにしながら走っていると、
突然、道路はカーブした下り坂になり、
私はハンドルを取られ、横倒しになった。


ゆっくり走っていたので
怪我はないと思ったが、
右足が横転したバイクと道路の間に挟まれた状態で
倒れ、バイクは重くて一人では外せない。


助けを呼ぼうにも、周りには人影もなく、
足を抜こうと焦っていると、
偶然、通りがかった車から、
二人の中年男性が降りてきて、
バイクを起こしてくれた。
彼らが去った後、緊張がほぐれ、
足や皮ズボンのベルト当たりに、激痛が走りだした。
転倒した時、ふくらはぎに熱いマフラーが当たっていたようだ。
皮ズボンの上からといえ、足にやけどを負い、
腰はベルトで切ったらしく、
ずる剥けになり、腹回りは血だらけになっていた。