1968年のバイク世界一周旅行

その36


ルート66沿い、広い駐車のあるレストランで
食事を摂っていると、
大型のトレーラーが停まり、
中から赤シャツ、ジーンズにブルーのネッカチーフ首に巻いた
オバちゃんが降りてきて、賑やかにガラガラ声で
親しそうにウェイトレスたちに話しかけ、


私と目が合うと「young guy(兄ちゃん)、きのうも見たけど、どこへ向かってんねん?」と、
大阪のオバはんのような口調で、聞いてきた。
勿論、オバちゃんは英語である。
「ニューヨークや」
「どっからや?」
「LAや」
「へェ、バイクで行くんか?」
「そや」
「バイクにバッグ積んで走る奴、見たことないなあ」
「オレもバイクで走ってる奴、一回も会わんので、何かおもろないんや」
それは事実だった。
私は、一度もツーリングしているライダーに出会わなかった。


バイクでアメリカ横断が流行り出したのは
映画「イージーライダー」が、
公開されてからである。


このオバちゃんは大型コンテナを運ぶ
トレーナー運転手で、もう数えきれないほど
ルート66を走り、アメリカ大陸を横断し、
いつも馴染のレストランで
食事を摂ると言っていた。


このレストランには、他に大型トレーナーの男性運転手が
五、六人食事を摂っていたが、気さくに私に話しかけてきた。