1968年のバイク世界一周旅行

その14


朝食が済むと
ジョージの運転するトラックの荷台に全員乗り込み、
全員といっても十数人だったが、
葡萄畑の農道を
もうもうと砂塵を上げながら、
猛スピードで東走り出した。


トラックの荷台は
夜明けの冷たい風をもろに受け
歯が合わないほど寒かった。


葡萄畑のはるか地平線に
太陽が昇り始め、
鮮やかな赤色に染まった
セコイヤ、ヨセミテ国立公園の山々が
東に小さく輝いていた。


トラックは十分ほど走ると
広大な葡萄畑の一角に停まった。
そこが、その日の作業場だった。


数え切れないほどの
葡萄棚がはるか先まで伸びていた。
その棚の一つ一つに
我々は並び、
熟していない葡萄の房に
太陽と風を当てるため
トラックの上に立ったジョージの合図とともに
垂れ下がった葡萄の蔓を
抱きかかえ反対側へひっくり返す作業を始めた。


年老いた熟練の日系人の作業は
荒っぽいがテキパキとして速かった。
彼らは葡萄棚越しに
大声で冗談を言いながら
前進していった。