1968年のバイク世界一周旅行

その98 1968年12月11日、道路という道路は人、車、白い牛、 それに「バクシーン、バクシーン」と手を伸ばし、 どこまでも、どこまでも、まとわりついてくる物乞いの子供たち、 それに自転車の後部に客席を付けた輪タクなどで 身動きもできないほど混雑しているボンベイ市内に入った。 タージ・マハルで出会ったヒッチハイカーに 教えてもらった「救世軍(サルベション・アーミイ)」が 運営する宿はボンベイの…

1968年のバイク世界一周旅行

その99 ボンベイに着いた私は、帰国の船に乗るだけであった。 もう私には地図を広げ、道を確かめる必要もなく、 砂漠の中で車に遭遇することは、 強盗に逢うかもわからないので怖く、 時折、砂丘に上り、砂煙を上げ近づいてくる車を 確認していたが、それも必要なかった。 砂丘の上に立つと360度、視界は広がり、 音のない世界であった。 両手を広げ高々と挙げると 「アラビアのロレンス」になったような気分だっ…

1968年のバイク世界一周旅行

その100 フランス船「ラオス号」のボンベイ・横浜間の運賃は 約6万円で、当時の日本の平均月収ほどだった。 ラオス号には、マルセイユなどから乗り込んだという ヨーロッパで知り合った多くの日本人若者が乗っていた。 ニューヨークから大西洋を横断してリスボンまで乗った ギリシャの豪華客船と違い、気取った堅苦しさもなく、 お互い旅の経験を語り合って楽しんだ。 ラオス号はセイロン(現スリランカ)、シンガポ…

1968年のバイク世界一周旅行

その101 香港に寄港し、町をぶらついていると、 前から来た中年の男性にとすれ違った途端、 その男は小さなビンを落とした。 ビンは割れ、中身の水分は道に流れ失せた。 その男性は、私が彼の体に接触したのが、 原因で病の娘のため、買ってきた高い飲み薬だ、 どうしてくれると、大声で怒鳴り始めた。 私は彼に接触した覚えはなかったが、 彼の騒ぎに多くの香港人が、私を囲みだしたので、 金を要求しているのだと…

1968年のバイク世界一周旅行

その102 旅の仕方にもいろいろある。 飛行機、鉄道、船の旅は快適さ、時間の節約 と利点はあるが、 自分の意志通り、自由に移動できない欠点もある。 バイクの移動は事故の危険もあり、 一般的に移動は昼間であり、 観た旅の風景は、出発地から到着地まで、 途切れがないという利点はある。 飛行機や鉄道の旅は、一足飛びに空間や夜間を苦労少なく 目的地まで移動できる。 だが、映画を最初から最後まで通して観ず…

1968年のバイク世界一周旅行

その102 二年ほど前、旧友との飲み会の席で、 お互いの若い時の話が出始めた。 私の番になった。場の流れで1964年米国留学し、 帰国の際、バイクで世界を観て回ったことを口にした。 私にしては、自分の経験など、済んだ過去のことで、 気の抜けたビールの話をするような気分であったが、 米国留学とバイク旅行のことを一分ほど口にした。 すると、旧友たちは一瞬静まり、 あっけにとられたような顔を私に向けた…

1968年のバイク世界一周旅行

その103 おだてられ、ホイホイと1960年代の米国留学と バイク世界一周旅行について、 記念にと500部自費出版したが、 「人生の途中下車」というタイトルが悪かったのか、 タダで差し上げようと決めていたが 「読んでやる」という人は、ほとんどいなかった。 自己顕示欲が弱いのか、気が小さいのか、謙虚なのか 私は著書を読んでほしいのだが、積極的に 「読んでください」と宣伝しなかった。 著書が出来上が…

1968年のバイク世界一周旅行

その104 しかし、私の1964年から68年までの米国の学校と仕事 の日々の生活のことが最も印象深く、 バイクで世界一周旅行は、 4年間の米国生活の卒業旅行的なもので、 偶然というか、たまたま、予算の関係でバイクを交通機関として使った旅行で、大げさにバイク世界旅行の部分を書くには勇気が必要だった。 今まで、ここに書いたことをまとめてみる。 そもそも、私が米国へ行く気になったのは、 1964年の「…

1968年のバイク世界一周旅行

その104 人には人の数だけの人生があり、 どう生きるのが最も良い生き方かは その人の価値観によるので、 どの生き方が一番良いとは言えない。 しかし、一般的には、人は少しでも人より 豊かな生活をしたいという 願望は持っていると思う。 私が就職して感じた差別感というか、 失望、後悔は、有名大学出身の同期生は 入社と同時に会社の将来を担っていく幹部として、 レールが敷かれていることを知った時である。…

1968のバイク世界一周旅行

その105 ここでは、私の1960年代の米国留学と バイク世界旅行の記憶をブログにしてみた。 書き始めた理由は、 amazonから著書「1968年のバイク旅行」の注文があったが、 500部しか刷らなかったので在庫がなくなり、 ブログで書くことにした。 年金暇人の身、時間はたっぷりあるので 暇つぶしとボケ防止に少しは役立つだろうと 毎日少しずつ書いてみた。 所々、抜けているところもあったので、 重…

1968のバイク世界一周旅行

その106 ふと思い出した。 ロサンゼルスを出発して、東へ走っていくと 当たり前のことであるが、だんだんロサンゼルスが遠のいていった。 ニューヨークに着き、そこから船で大西洋洋を東へ行き リスボンへ向かった。 そのあとヨーロッパ中を回り、 東へ中近東を目指しボンベイに着いた。 ボンベイから船に乗り、タイ、シンガポール、香港経由 東へ、そして横浜、日本に着いた。 当たり前のことであるが、 日本とは…